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学芸員のつぶやき vol.32 鳥羽市立海の博物館
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三角旗
  • 建設途中の船の収蔵庫

    建設途中の船の収蔵庫

  • 祭礼用具の部屋は床が板敷、天井は板張り

    祭礼用具の部屋は床が板敷、天井は板張り

  • 船の収蔵スペースは床が土間敷、天井はコンクリート

    船の収蔵スペースは床が土間敷、天井はコンクリート

第32回「学芸員のつぶやき」は、鳥羽市立海の博物館縣拓也さんです。




 鳥羽市立海の博物館は漁具を中心に、祭礼用具や漁村の生活用具、木造船など、民俗資料約63000点を所蔵し(2025年11月時点)、現在も増え続けています。展示利用していないものは、もちろん収蔵庫におさめて保管・保存しているわけですが、当館の収蔵庫の構造はやや特殊なものになっています。


 展示棟も含めて設計したのは建築家の内藤廣さんで、当館は数々の建築関連の賞をいただいています。1971年に開館し、1992年に現在地へ移転しました(移転以前の建物は原広司さん設計)。元々は個人で始めた私立の博物館でしたが、2017年から鳥羽市立となり、現在に至っています。


 設計にあたっては前館長から「坪単価は一般的なものの半分で、ただし100年維持できる建物を」という注文が内藤さんにあったらしく、アイデアをだす苦労から、収蔵庫の建物が組みあがるまで、何度も「明日には建築をやめよう」と思ったと述懐されています。


 多くの人の情熱、苦悩、無茶ぶりが結実した成果である収蔵庫に、国の重要文化財5879点(伊勢湾・志摩半島・熊野灘の漁撈用具)を含む資料たちが出番を待っているわけですが、通常は博物館で重要文化財があれば、適切な温湿度を保つために、機械空調が必要になります。しかし、前述の通り私立の博物館でお金もない、しかも高エネルギーを消費し続けるのはエコではない、ということで、冒頭の特殊な構造へと話がやっと戻っていきます(ヨカッタ、ヨカッタ)。


 プレキャストコンクリートでできた収蔵庫の建物は3棟あり、そのうちのひとつ、木造船を約80隻収蔵する建物は、常時来館者が見学できるようになっています。材質が木なのであまり乾燥すると割れてしまうことから、湿度はやや高め、70%程度で保つ必要があります。船の収蔵庫は土間敷になっており、三和土(たたき)が湿気を吸ったり吐いたりすることで湿度を調整しています。玄関や炊事場で利用されてきた、日本の伝統的な建築工法が、資料の保存に重要な役割を果たしているわけです。


 ちなみに非公開の収蔵庫内には、漁獲や漁村生活で使用された桶や籠だけを納めた部屋もあり、ここは船と同じく土間敷きですが、天井はアーチ状の板張りになっています。紙類や藁も多い祭礼道具は小さな部屋に入れて、床・天井ともに板張りといったように、資料の材質に応じて空間の大きさや、構造材を変えています(ほか、いくつか違う構造の空間があります)。


 厳正に温湿度を管理するためのベストな方法ではありませんが、自然素材本来の力や伝統的な技術を活かし、自館においてできうる限りのベターな条件下で、漁村のお宝ともいえる貴重な資料を、これからも大事に守ってゆきたいと思います。


 ただ慢性的な経営難が続く当館、本物の金銀お宝が土のなかに眠っていてくれるとうれしいのですが。。。



鳥羽市立海の博物館

縣拓也


  • 船の収蔵庫前景
    船の収蔵庫前景
  • 籠と桶の部屋は床が土間敷、天井は板張り
    籠と桶の部屋は床が土間敷、天井は板張り
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