

第31回「学芸員のつぶやき」は、新上五島町鯨賓館ミュージアムの松園菜穂さんです。
長崎県の西端、五島列島の北部にある新上五島町(しんかみごとうちょう)というところにわたしたちの「新上五島町鯨賓館ミュージアム」があります。有川港ターミナルに併設する公立の歴史系博物館です。
通称「鯨賓館(げいひんかん)」ですが、「迎賓館」ではなく「鯨賓館」となっているように「鯨(クジラ)」の字があてられていることにお気づきでしょうか。
この施設名称は、当館がターミナルに併設していることから、お客様をお迎えする意味合いの「迎賓館」に、この場所・有川が近世・近代は捕鯨で栄えた町であることから「鯨」という字を重ねたようです。近世の頃、当館の前に広がる有川湾に鯨が回遊していた様子をしたためた絵図が残っています。
常設展示では、クジラの生態や近世・近代の捕鯨関係資料があるのはもちろんですが、これからの冬のシーズンにぜひご覧いただきたいものとしてカトリック教会堂に関する展示があります。特におすすめは、教会堂の構造がわかる模型です。
新上五島町は小さな島ですが、29の教会堂が現存する特色ある地域です。古くは明治時代から現代に至るまで、木造・レンガ造・石造・コンクリート造と時代の移り変わりを示すように素材の多様性もみてとれます。教会建築の父、鉄川與助の出身地で、與助が手掛けた教会堂は文化財としての価値が高く、本町にある指定文化財の教会堂のうち、現存する3つは鉄川與助自身の設計です。今なお、現役のカトリック教会堂として祈りが捧げられています。
小さな島にこれだけ密度高く教会堂が建設される契機となったのは、江戸幕府によってキリスト教の禁教を迎え、五島列島の向かいにある大村藩外海地方からわざわざ船で海を渡り移住してきた潜伏キリシタンの存在です。
潜伏キリシタンたちは、キリスト教の信仰のともしびを繋ぐために移住した結果、キリスト教(カトリック)信仰が今なお深く息づいています。
新上五島町では、12月に入ると、毎週金・土に各教会持ち回りで教会コンサートが行われます。星空が輝くなか、趣のある教会堂で聴く演奏の音色は、カトリック教会の信徒さんはもとより観光客の方にもご好評をいただいています。
船でしか行けない島ですが、時間かけて訪問する旅行も素敵なひとときになると思いますので、ぜひご予定を立ててお越しいただけますと幸いです。
ご来島の際は、ミュージアムにもぜひお立ち寄りください、みなさまのご来館をお待ちしております。
新上五島町鯨賓館ミュージアム
松園菜穂

