今回ご紹介するのは琴平海洋博物館の「あらかぜ」です。
「あらかぜ」は昭和29(1954)年、当時世界的にもめずらしい海洋で使用するオールアルミ合金船として三菱下関造船所で建造された高速船です。
昭和29(1954)年3月竣工以来、海上保安庁の巡視艇として北九州方面で20年間活躍し、その後、海上災害防止センターの訓練船として使用され、昭和56(1981)年1月就航後27年で廃船となりました。
「あらかぜ」は、4半世紀を超えて就航し、事故一つなく任務を全うしました。長時間の過酷な使用により、船体は接舷時などに生じた変形が部分的にみられますが、損傷・腐食などは全くなく、また船体から切り出したサンプルの強度試験でも材料の劣化は全くないことが確認されています。
この「あらかぜ」を契機として、多くの造船所で軽合金製の船が製造可能となり、さらに船舶だけでなく鉄道車両や建築材料等、多くの分野にその波及効果をもたらしていきました。令和4(2022)年9月、その功績を認められ「ふね遺産第41号(現存船第16号)」として認定されました。
現在、「あらかぜ」船体は、当館の屋外展示品として現物保存しており、外観のみご観覧いただくことが可能となっております。
※「ふね遺産(The Ship Heritage)」とは、日本船舶海洋工学会が平成29(2017)年から認定する表彰制度で、歴史的に価値のある「ふね」関連遺産を対象に認定しており、「ふね遺産」を通して文化的遺産として次世代に広く伝えることを目的としています。