「今月の逸品」第15回は 新潟市歴史博物館「みなとぴあ」の「国指定重要文化財旧新潟税関庁舎」です。
◆概要
安政5(1858)年の修好通商条約の締結により5つの開港場(新潟・横浜・函館・長崎・神戸)として日本海側で唯一選ばれた新潟港は、明治元年11月19日(1869年1月1日)開港しました。信濃川河口部に位置し、新潟市中央区緑町に存する国指定史跡旧新潟税関及び国指定重要文化財旧税関庁舎は、5つの開港場で唯一現存する開港当時の運上所(税関)の遺構です。
◆建物の沿革
1869(明治2)年10月 新潟運上所として完成(1873(明治6)年1月運上所を税関と改称)
1969(昭和44)年6月 旧新潟税関庁舎(1棟・附棟札1枚)が重要文化財に,敷地が史跡に指定
1971(昭和46)年12月 旧新潟税関庁舎の解体復原工事竣工
1972(昭和47)年4月 新潟市郷土資料館として使用開始(~2003(平成15)年3月閉館)
◆設計者
不明(新潟府の外務担当職員の指揮)
◆施工者
「請負人 弥七・礼助」「棟梁 円六」(棟札による)
◆建物様式上の特徴及びその評価
開港当時の税関庁舎として現存する,唯一の建築物。
日本建築の技術を用い,洋風をまねて表現しようとした「擬洋風木造建築」の建物です。
特徴的な意匠として,塔屋,アーチ状通路,なまこ壁,下見板鎧戸付きガラス窓,きんちゃく型ガラス窓,べんがら塗装,青海波模様の棟瓦が挙げられます。
内部は漆喰壁で,一部の天井は紙貼り天井になっています。
海鼠壁と下見板鎧戸付きガラス窓
海鼠壁と巾着窓
青海波模様の棟瓦
◆建物が使用されていた当時の利用状況
当初の利用状況は不明です。新潟港の貿易量はわずかで,品物が税関に運び込まれて検査をうける例はわずかであったと思われます。
◆現在の建物について
郷土資料館時代は,事務室や展示室として建物を使用していました。調度類を取り除き,建物に修理を施して,重要文化財である建物そのものを見てもらえるようにしています。旧新潟税関の歴史や建築様式に関するパネル,かつて使用していた六灯ランプを展示していますので,ぜひご覧ください。
◆敷地内の概要など
敷地内には、旧税関庁舎のほか「石庫」と呼ばれる復元された保税倉庫、移築復元された「旧第四銀行住吉町支店」(登録有形文化財)、市役所2代目庁舎の外観イメージを取り入れた「新潟市歴史博物館本館」など、明治期から昭和初期の「みなとにいがた」を感じることのできるゾーンとなっています。また、信濃川河口の対岸には、佐渡航路のフェリーが就航し、近代的な31階建て「朱鷺メッセ」を望むことができます。
旧税関庁舎は、旅番組等でも多く取り上げられ「万代橋」ととに、みなと新潟の代表的な観光名所となっています。
【参考文献】
『重要文化財旧新潟税関庁舎修理工事報告書』(1971)
『新潟市史通史編3』(1996)
『日本の近代建築 上』藤森照信(1993)
『旧新潟税関庁舎等保存管理・活用計画』(2009)