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ミュージローブログ
「今月の逸品ver.2」 vol.27 海の博物館 の「クジラモリ」
ミュージロー
2019/08/09
三角旗

「今月の逸品ver.2」第27回目は、海の博物館の「クジラモリ」です。

 志摩半島から熊野灘にかけての沖合では、秋から春にかけて、黒潮に乗ってクジラが行き来する海域でした。
 古い文献や絵図には、この地域で行われていたクジラ漁の様子が残されています。
16世紀頃には、クジラを銛で突く古式捕鯨という方法で、クジラを獲っていました。1隻に15人ほどの漁師が乗った鯨船15~20隻が船団を組み、総勢300人ほどで行われます。クジラを見つけると、クジラに近づいていき、小型の銛から大型の銛へと順に打っていき、数十本打ったところで弱りかけたクジラにとどめを刺すケンを突き立て、最後に勇敢な漁師が、クジラに飛び移り、短刃でクジラの鼻を切ります。ここで、クジラを仕留めたことになります。ただ、この古式捕鯨は、銛を打ち込まれ、逃げ惑う巨鯨と向き合う、とても危険な命がけの漁でした。
 「クジラ一頭獲れば七浦賑わう」と言われていたほど、クジラは肉以外にも油、骨、皮、歯、髭の一本まで捨てるところが無く、クジラ一頭獲れることで、近隣の村々まで潤うほどでした。そのため、捕鯨が盛んであった熊野灘沿岸の地域には、クジラ供養塔や、捕鯨記念碑など、人々のクジラへの想いが碑に残されています。
 海の博物館には、たくさんの捕鯨用具が収蔵、展示されています。クジラを突いた大小の銛や、クジラを解体する包丁、鮮やかな色彩が施された全長13メートル余の鯨船、そして古式捕鯨用具に限らず、近代的な捕鯨砲などの資料もあります。
以上のように、日本人との伝統的で密接な関りをもってきたクジラですが、漁の対象物としてだけでなく、その雄大な姿や流線型のフォルムから、人々の心を惹きつけ、絵画や立体造形、生活用品のデザイン、玩具など、クジラをモチーフにした作品や商品などがたくさん作られています。今回、海の博物館では、そのような作品や商品をたくさん集め、特別展「クジラはアートだ!」を開催しました。見て楽しい展示ですが、捕鯨史や生態の情報も盛り込んでおり、小さなお子様や海外の方でも直感的にクジラの魅力を感じ、ひいてはクジラたちが暮らす海に対しても興味を深めて頂くことができればと思います。

泡
灯台

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