2013年12月05日
今月の逸品vol.26 琴平海洋博物館(海の科学館)の「西洋軍艦構造分解図説」と「海岸備要」
「今月の逸品」第26回は、琴平海洋博物館(海の科学館)の「西洋軍艦構造分解図説」と「海岸備要」です。
同図説は、文化5年に長崎通詞本木正栄の肉筆のもので、縦51㎝・長さ660㎝の巻物です。巻物には大砲を備えた「軍艦全図」、「船首側面ヲ示セルノ図」、「船首ノ正面ヨリ上段カンバント呼ブ所ノ下方ヲ見タル図」の他、航海器具などが細かく描かれています。
元治元年坂本龍馬の所有となり、慶応3年には大洲藩の武田成章に譲ったことが箱に書かれています。
通詞は、通訳のほかに貿易の事務も行い貿易の第一線に立って働いていました。通詞の組織が整ったのは、オランダ商館が平戸から長崎出島に移ってからのことで、通詞を取り締まる「オランダ通詞目付」が置かれてからです。その組織は目付の監督のもとに、「大通詞・小通詞、小通詞助、小通詞並、小通詞末席、稽古通詞、内通詞」などで、幕末になるとその人数はおよそ140人にもなりました。なお、本木家は元禄八亥年、通詞目付の職に就いています。
また、本木正栄は文化5年長崎奉行より当家に蔵する砲術の書(和訳「新撰大砲打放名艦」)を訳して呈出せよと命ぜられましたが、正栄は和蘭人より直に聞いたことや他書を考索して附加えるなどして、「大砲図解、鋳造から硝石火薬の製造分量、装填の術、海防の為の砲台築城法」などを記述した「海岸備要(海岸砲術備要)」全五巻を完成しています。(当館所蔵)
西洋軍艦構造分解図説(琴平海洋博物館所蔵)
海 岸 備 要(海岸砲術備要)(琴平海洋博物館所蔵)
at 11時09分